今朝、神田の駅を降りると駅前の書店のポスターに、
『苦役列車』の文庫化と映画化のポスターが貼ってあった。
コピーは「私小説の逆襲」
噴飯もののコピーだけど、作者の西村賢太氏のファンなので嬉しいというか、
よかったね賢太、これで風俗いっぱいいけるね。という感じである。
この小説は、去年の前期の芥川賞になった本だ。
こんなことを書くと歳がばれるが、
昔はハードカバーから文庫にするのには版を全部作り替えていたから、
結構時間がかかった。
しかし今では基本デジタルデータを並び変えるだけなので、
出そうと思えば同時に出せるそうだ。
ということで、1年ちょっとで文庫である。
芥川賞や直木賞は世間的には何か立派な文学賞と思われているみたいだが、
もともと菊池寛が作った文藝春秋社の商売なので、けっこうあざとい選考の仕方が行われる。
今年の前期を取った田中 慎也さんなんかも、石原慎太郎に対する発言で話題になったけど、たぶん狙いは、山口の工業高校を卒業して、その後アルバイトを含めた職に就くことなく書き続けた彼と、同時受賞者で東大でポスドクやってた円城塔さんとの対比だ。
露骨になって来たのは2004年の綿谷りさと金原ひとみの受賞くらいの気がする。
西村賢太も同時受賞で、相手は父親とじいさんがフランス文学者で、曾祖父が石井光次郎(元衆議院議長)、おまけに大叔母が、サガンの翻訳で有名なエッセイストの朝吹登水子とシャンソン歌手の石井好子って無類の毛並みの良さで、しかも若くて美人!の朝吹真理子ってこりゃわざとでしょ。
だから賢太の「(受賞の知らせが遅かったので)そろそろ風俗に行こうと思っていた」という発言がニュースになったりもした。
みんな大好き、美女と野獣ってやつだ。
でも実はそんなことどーでもいいくらいに彼の書く文章は素晴らしい、
苦役列車の主人公、北町貫多が中学卒業してすぐに肉体労働を始め、19になって初めて職場で親友らしきものを見つけたけど、奴には彼女がいたって箇所を抜き書きします。
その女はまるで化粧っ気もなく、
髪も僅かに茶色に染めた一見清楚風な、
肩までのストレートと云うのはよいとしても、
毛質が細くて量も少ないので清楚と云うよりは凄愴な幽霊みたいな感じであった。
一丁前に眉は形よく整え、
ピアスなぞもしていたが、
昔の肺病患者みたいなのを連想させる並外れた青白い顔色の悪さにそれは何ら映えるものではなく、
着ている夏物のワンピースが無地の白と云うのも、
いかにも初対面の相手というのをとりあえず計算したあざとさがあり、
見た目の至極おとなしそうな風情の中に、
何か学歴、
教養至上主義の家庭に育った者独特の、
我の強い腹黒さと云うのがアリアリと透けてみえる、
つまりはあらゆる意味で魅力に乏しい、
いかにも頭でっかちなタイプの女であった。
素晴らしい!
呪詛もここまでくると清々しいやね。
すごい下劣だけど品を感じるんだよね。不思議なことに
ちなみに、上の箇所の女性は映画版の前田敦子ではありません。